はじめに
「さくらんぼのタルト」じゃなくて「チェリーのタルト」?
そう、日本の「さくらんぼ」じゃなくて「アメリカンチェリー」
このアメリカかぶれ〜!
正式名称は、おフランス語の「クラフティ・オ・スリーズ(Clafoutis aux Cerises)」→さくらんぼのクラフティです。
なぜこの季節外れの時期に「チェリーのタルト」なのでしょうか?
おっさんのブログ、季節感がいつも世間ズレしているから全然気にしないよ!
それはアメリカンチェリーがスーパーの店頭に並ぶ「5月〜7月」に向けての予行演習なのであります。
今回のお菓子はタルトから作っていく複雑系なので、今のうちにやって慣れておかないと、本番で苦労してしまいます。
そんな心配してんのおっさんだけだけどね。
フレッシュな生のアメリカンチェリーが出てくる5〜7月の本番当日に向けて今回は、冷凍のアメリカンチェリーを使います。
業務スーパーで見つけた冷凍アメリカンチェリー。その名も「スイートチェリー」。ハンガリー産です。または以前チリ産の時もあったような気がする。
それはもうアメリカンチェリーではなく、ハンガリーチェリー。チリチェリー。又の名をブラックチェリー。
い、韻を踏んでいる・・・。リーリー。
どうでもええがな。
初めてこれをおうちで作った時は、丸一日潰してしまった思い出のお菓子「クラフティ・オ・スリーズ」 工程をあれやこれやといろいろ省いてもやる事が多くて大変!!
でも、おうちでこれが完成した時の達成感と食べた時の感動は、筆舌に尽くし難いものがあります。
あんましハードル上げんなや。
では、早速作ってみましょう。
パートブリゼ 配合
パートブリゼとは、フツーのタルト生地とパイ生地の合いの子みたいな食感の生地です。水分が染み込みにくいので今回のように液体を流して焼くクラフティやキッシュなどに向く生地です。
直径18cmのタルト型、2台分の配合です。1台分で作る場合は半量にしてね。
バター | 200 | |
薄力粉 | 300 | 今回は、ニップンの「こんな小麦粉ほしかった」を使用しています。 |
グラニュー糖 | 100 | 上白糖でもOK。 |
全卵 | 100 |
元々の配合は砂糖が入っていなかったりすごく少ないよ。何度も作るうちに少しずつ増やして全体としての甘さのバランスを上げていったら、こんな素晴らしいぴたんこ配合に辿り着きました。
出たっ!伝家の宝刀「無理やりぴたんこ配合」!!
今回どうしても必要な道具としてフードプロセッサーを使います。
フードプロセッサー無くてもできるけど「サブラージュ」という薄力粉の中でバターを小さく刻んだ後、両手で擦り合わせていく作業は、とんでもなく初心者殺しなので、思い切って無くしてみました。
さすがおっさん、セオリー無視の姿勢がぶれないね。
薄力粉は毎度お馴染みニップンの「こんな小麦粉ほしかった」を使っていますので振るっていません。普通の薄力粉を使う場合は振るってね。といつもの調子で言いたいところですが、今回はフードプロセッサーで粉砕するので、どんな薄力粉を使ったとしても振るわなくてOKです。
タルトやクッキー生地を仕込む時にいつも悩ましいのが、薄力粉は種類によって吸水率が違うために、レシピの通りにやってもパサパサで伸びにくい生地になったり、ベチョベチョくっついて上手く伸ばせなかったりすることがあります。(夏と冬の湿度にも影響を受けます)
粘土のようなベストな状態になるまで、水分を足したり、粉を足したりして微調整をしたときは、使った粉の種類と、どのくらい足したかメモしておいて、次に活かして下さいな。
パートブリゼ 作り方
夏場は全ての材料とできればフードプロセッサーの容器もよく冷やしておいて下さい。
フードプロセッサーに、冷えて硬いままのバター(モーターの負担軽減のため1〜2cm厚にスライスしています)と、薄力粉を入れて、バターの粒つぶが指先に触れて感じないくらいに細かく粉砕します。
タルト2台分の配合がうちの家庭用サイズのフードプロセッサーには入り切らず、2分の1量ずつに分けて2回やりました。大きなフードプロセッサーが欲しいよ〜。
全卵とグラニュー糖をよく混ぜてから、薄力粉とバターが粉末状になって入っているフードプロセッサーの中に、この全卵+グラニュー糖を混ぜたものを加えて、スイッチを短く入れながら、お団子状に固まる前のザラザラとしたそぼろ状態まで混ぜます。
大きなボールに移してモミモミしてお団子状に丸めます。
さて、ここからは打ち粉で台所を汚したくないおっさんが実践している、ラップで挟んでまな板プレスからの、ラップのまま生地を麺棒で伸ばしていく方法です。
まずは、丸く平たくして大きなラップで包んで冷蔵庫に入れておきます。ここ大事。
パートブリゼは縮みやすく伸ばしにくいので、最初の段階で丸く平たくしてから冷蔵庫で休ませます。
詳しくは、ショートブレッドの回をご参照ください。
10〜20分おきくらいに冷蔵庫から出しては麺棒で薄くしていきます。
円形に伸ばすには、少し伸ばしては45度回転させる。又少し伸ばしては45度回転させる作業の繰り返しです。
ラップで包んで伸ばすやり方も、くそめんどくせぇ!!
このめんどくささを乗り越えた先に、ハンガリーとおフランスとアメリカの大地が繋がります。
ちょっと何言ってるかわからないから動画にしてくだせぇ!
パートブリゼはフツーのタルト生地であるパートシュクレよりもずっと伸ばしにくくて、一度に広げようと頑張ってみても、縮んでしまうので、根気よく「伸ばす→冷蔵庫で休ませる」を繰り返しましょう。
空焼き用の敷紙の準備
このパートブリゼは、そのまま中にアパレイユ(液状の生地)を流して焼くと、生焼けになってしまうので、空焼きをしていったんしっかり火を通してから、アパレイユを流して、本焼きします。
そこでタルト型に敷き込んだパートブリゼの生地の上に敷紙を敷いて、その上に重しをした状態で空焼きするのですが、その敷紙を、パートブリゼ生地を冷蔵庫で休ませている合間合間の隙間時間に作っておきましょう。
タルト空焼き用の敷紙の作り方
ダイソーの18cmのタルト型と、クッキングシートを使っています。ダイソーのタルト型は底板が外れるタイプでこのお値段。感激!(税込330円 2025年1月)
まず写真のようにタルト型より大きめなサイズにカットします。→4つ折り→さらに半分→さらに半分。(これで16等分)
型の中央にとがった先端を合わせて、縁の高さをタルト型の高さの2倍くらい確保して余分をカット。
折り目の所まで切り込みを入れて、型の側面にあたる縁が上手く立ち上がるようにします。
ブリゼ生地の敷き込み
フツーは焼成時に底が持ち上がらないように「ピケ」という穴あけ作業をフォークなどでしますが、今回は液体を入れて焼くのでピケはしていません。
ほんとはもうちょっと薄く(5mm厚くらいに)したかったけど、なかなか伸びきらないのであきらめました。
あきらめんじゃねぇ!
縁の立ち上がりを、タルト型の高さより1cmほど高めのところでハサミでカットします。ちょっと焼き縮むから。
普通のタルト生地(パートシュクレ)なら、欠けた部分に無理やり付け足してモミモミしてなじませれば、なんとかツギハギできるけど、
このブリゼ生地(パートブリゼ)はツギハギできたように見えても焼き上がりに大きく変形したり割れたりするので、充分なサイズで均一な厚みの一枚の円形にしっかりと伸ばして敷き込み、余った縁をスパッと綺麗にカットするのが理想的です。
厚みの差や、カット面の少しの乱れが、焼き上がりに大きな歪みとして現れます。
それだけ膨らむということやね。
切り落とした生地は写真のようにクッキングペーパーを敷いて一緒に焼いておやつにしてね。最高に美味しいおやつができます。
”重し”は小豆を使い回しています。大豆でも黒豆でも米でもなんでもいいですが、夏場は虫食いが発生するので、密閉容器に乾燥剤入れて、できれば冷蔵庫にと管理が面倒だし、毎回使用後に調理して食べてしまうのもありですが、それもまた面倒なので、タルトストーン(アルミ製の専用の重し)を買ってしまった方がラクかも・・・。
オッサンもええかげんタルトストーン買っとけや。
空焼き(からやき)
200℃で約13分。縁が色付いてきたら、重しをはずします。
注意① 型を傾けて重しをざらざらとこぼしていく時に、勢いよくひっくり返したりすると、生地が型から外れて壊れてしまいますので、そっと傾けて慎重に重しを取り除いて下さい。
注意② 下にかなり大きめのボールやたらいなどを置いてその上でやらないと、床に小豆や重しの粒々を撒き散らすことになります。
重しをはずしたら、クッキングシートもはがして(これもそっとはがして下さい。生地がくっついて剥がれてしまうことがあります)側面が焼きすぎにならないように藁半紙などで作った紙製の輪っかを置いて、再びオーブンへ。
200℃のまま底面が色付くまで約5分〜10分
重しをはずしてからは、底が浮いてくるので、浮いたタイミングで浮いた所だけフォークで穴あけして沈めて下さい。空いた穴はこの後、卵液を塗って焼きかためて塞いでしまうので大丈夫です。
途中、底面が色付いたタイミングで全卵をときほぐした卵液を生地内側全面にハケ塗りして、再度200℃のオーブンで約3分〜焼き固めます。この卵液の余りは最後に作るアパレイユ(液状の生地)に使って下さい。
アパレイユ
アパレイユとは卵や牛乳などを混ぜ合わせたクリーム状の流動性のある生地のことです。
まずは冷凍のスイートチェリーを電子レンジの解凍モードで解凍して下さい。アタクシのレンジでは解凍モードで9〜10分かかりました。耐熱ガラスボールや陶器の容器を使って下さい。ステンレスはスパークするので。
それからストレーナー(ザル)で汁切りしておきましょう。
アパレイユを仕込む前に汁切りし終わったスイートチェリーを空焼きしたタルトにびっしりと並べておきましょう。中心を開けて円を描くように並べると後でカットしやすいと思います。
アパレイユの配合
18cmタルト型 2台分
全卵 | 200g |
グラニュー糖(上白糖でも可) | 150g |
サワークリーム | 100g |
牛乳 | 100g |
薄力粉 | 20g |
レモン汁 | 20g |
キルシュ(さくらんぼの蒸留酒) | 20g |
バニラペースト | 5g |
スイートチェリー | 400g |
サワークリームは「タカナシ北海道サワークリーム」100gを使っています。ちょうど100g。
フツーおっさんみたいに2台分も作らんと思うぞ!
キルシュやバニラペーストは無くてもできるけど、このクラフティにとってはなかなか侮れない存在感を発揮してくれるので、できれば入れて欲しいです。
アパレイユの作り方
夢中になって作っていたら工程の写真をすっかり撮り忘れてた・・・。
全卵とグラニュー糖をよく混ぜ合わせておく。
別の大きめのボールにサワークリームを入れ、牛乳を少しずつ加え混ぜます。薄力粉も混ぜます。
サワークリーム+牛乳+薄力粉のボールに、全卵+グラニュー糖を少しずつ混ぜていきます。
レモン汁、キルシュ、バニラペーストを混ぜます。
目の細かいストレーナーで漉してから、スイートチェリーを並べたタルト型の縁いっぱいまでなみなみ流します。
そっと流さないと、スイートチェリーの位置がズレたり、果汁と混ざって汚くなったりします。
本焼き
200℃のオーブンで、約25分焼きます。軽くゆすってみて表面がゆらゆらと動くようならまだ焼き足りないので、5〜10分くらい追加で焼いて下さい。
粗熱が取れたら、冷凍庫で少し固めてからの方が綺麗に切れます。
8等分にカットします。今回使用した直径18cmタルト型の縁の波波は48溝あるので、カットの1切れを6溝ぶん縁のギザギザを目印にしてラインをつけ、カットすると綺麗に切れます。
あと、アルミ箔は8号がちょうど良い大きさです。
おっさん細けーな。
あと、ダイソーの「漬け込み用 保存パック」というタッパーが、ちょうど1台分8カットがピッタリ収まるサイズでした。
でも高さがぴったりすぎて、フタがくっついてしまう・・・。
ダイソーさん、あと1cm、いや5mm高さが欲しいです。
勝手なこと言ってんじゃないわよ。
まとめ
何がめんどくさかったかって? わかってますよみなさん。パートブリゼを丸く伸ばしてタルト型にセットするところでしょう? これさえなくなれば、どんだけラクか。
ということで、ここからは、とにかく美味しく食えりゃええがなっ!っていう貴方様のための、さらなる時短、省略の巻!
パートブリゼをお団子にしたら、ラップで包んで、必殺まな板プレスからの冷蔵庫と麺棒での伸ばしの往復を、形を気にしないで、ただただ5mm厚くらいまで薄く伸ばす。
そしてクッキングシートやベーキングシートを敷いた天板に適当なサイズにカットして並べて200℃約15分〜で茶色になるまで焼く。
これでパートブリゼの出来上がり。これをグラタン皿やココット皿に適当に割って入れます。
解凍したチェリーやブルーベリーを入れます。
アパレイユを注ぎます。
170℃で15分〜表面がほんのり色付くまで焼きます。出来上がり。
なんなら、パートブリゼをアパレイユの中に仕込まなくても、チェリーとアパレイユだけで焼いて、パートブリゼをかじりながらグラタン皿の中身をスプーンですくって一緒に食べれば、湿気ないサクサクのパートブリゼを楽しめます。
気持ちが少しラクになった気がする。
あまり完璧を追求しないで自由に遊んでちょ。
チェリーストーナー
2011年から使っているチェリーストレーナー。シンプルでしっかりとした作りのドイツ製 Westmark の製品です。
アメリカンチェリーの季節に向けて今のうちから準備しておくように。なんてね。
アメリカンチェリーの種をカシャンッと簡単に取り除いてくれます。果汁が飛び散るので、なるべくボールの中でやりましょう。
それでは次回もお楽しみに。またね〜!
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